HEA BLO GEO coordinateReferenceSystem 2024

精密マッピングの新時代:Pix4Dと座標参照系の活用法

座標参照系は、正確で地理的に参照されたデータを得るために欠かせない要素です。Pix4Dではどのようにこの複雑なシステムを効率的に管理可能なのかをご紹介します。

Pix4Dには、座標参照系(Coordinate Reference System, CRS)に特化した専任チーム「SRS(Spatial Reference Systems)」があります。CRSは膨大かつ複雑で、Pix4Dのソフトウェアの中核を成す要素です。本記事では、Pix4DがどのようにCRSを活用し、正確な地理空間データを提供しているのかを解説します。

フォトグラメトリーとジオリファレンスデータ

Pix4Dは、現実の世界をデジタル化し、測定可能なデータに変換するフォトグラメトリーソフトウェアを開発しています。各種製品がジオリファレンスされたデータを生成または利用しており、以下のようなデータを取り扱います:

座標参照系を理解することは、正確な位置決めや高度の算出、さまざまなアプリケーションでの精密なロケーションデータを可能にするための鍵です。

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Latitude (𝜙) and Longitude (𝜆) on an ellipsoid. Peter Mercator, Public domain, via Wikimedia Commons.

座標参照系と地理空間コミュニティへの貢献

Pix4Dは、オープンソースの 「PROJプロジェクト」にも貢献しています。このプロジェクトの主要メンバーであるPix4Dのエンジニア、Javier Jimenez Shawは、ジオスペーシャルデータの座標変換を可能にするソフトウェアの開発に携わっています。PROJは世界中で使用されており、地理空間業界全体において重要な役割を果たしています。

なぜ座標参照系はこんなにも多様なのか?

座標参照系(Coordinate Reference System, CRS)は、地球上の位置を正確に定義するために不可欠なものです。同じ地球上の地点であっても、使用する座標参照系によってその座標は異なります。この多様性は、地球の形状を表現する方法や座標系を定義する方法が多岐にわたることに起因しています。

地球の形状と座標参照系 座標参照系は、地球の形状をどのようにモデル化するかという選択に大きく依存します。地球の形状は楕円体として近似されることが一般的ですが、その数学的な定義や参照点は各国の地理機関ごとに異なります。この違いが多種多様な水平座標参照系(地理座標系や投影座標系など)の誕生につながっています。 さらに、垂直座標参照系(高度を定義するシステム)や複合座標参照系(水平と垂直を組み合わせたもの)など、さまざまな種類の座標参照系が存在します。

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地図投影と歪みの問題 地球は球体であるため、それを平面(地図)に投影する際には必ず歪みが生じます。地球の形をオレンジの皮に例えると、皮を剥いて平らにする過程で形状が変わってしまうことと同じです。投影法にはさまざまな種類があり、目的に応じて適切な投影法を選択します。

しかし、どの投影法でも、何らかの要素(簡潔さ、正確さ、形状の忠実性など)を犠牲にしなければなりません。Pix4Dのユーザーにとっては、プロジェクトの規模やフォトグラメトリーの性質上、**ラジアン補正法(Lambert Conformal Conic)や横メルカトル法(Transverse Mercator)**などの「等角投影」が一般的に使用されます。

ジオイドモデルとは?垂直座標系とその複雑さを理解する

垂直座標系(Vertical Systems)は、通常、平均海水面(Mean Sea Level, MSL)を基準として高さを定義します。しかし、地球上の重力は場所によって異なり、その結果、最大で100メートルもの差が生じることがあります。そのため、衛星データを使ってMSL基準の高さを計算するには、**重力モデル(gravimetric model)**が必要不可欠です。

楕円体とジオイドの違い 地球の形状を表すために使用される2つの主要なモデルが、**楕円体(ellipsoid)とジオイド(geoid)**です。

  • 楕円体: 地球の形状を単純化した数学的な表現。計算が容易で、国際的な基準としてよく使われます。
  • ジオイド: 平均海水面を基準とし、地球の重力分布を反映したモデル。地球の形状により近いが、非常に複雑な形状を持っています。
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左:楕円体、右:ジオイド 楕円体は地球を数学的に簡易化したモデルであるのに対し、ジオイドは重力分布に基づいたより複雑な形状を表しています。

ジオイドモデルの国別採用 各国は、それぞれのシステムで使用するMSL基準を定義するため、独自の重力モデルを採用します。このため、国や地域ごとに異なるジオイドモデルが存在します。この多様性が、垂直座標系の複雑さを増す要因となっています。

EPSGレジストリ:座標参照系の標準 楕円体、投影法、MSL基準、座標単位の違いが組み合わさり、現在の多種多様な座標参照系が生まれました。地理空間データの業界標準として広く利用されているのが、**EPSG Geodetic Parameter Dataset(EPSGレジストリ)**です。この公開カタログには、数千もの座標参照系が定義されており、それらを変換する方法も網羅されています。

座標変換の仕組みと更新の重要性

座標変換の方法は、スイスの地形測量局(swisstopo)やアメリカ海洋大気庁(NOAA)など、各国の専門機関によって定義されています。地球科学は常に進化しており、新しい測量キャンペーンや高精度なシステムの導入により、地球表面モデルが更新され続けています。これらの機関は定期的に測量データを改訂し、精度を向上させるための努力を続けています。しかし、この進化が新たな座標参照系の複雑さを生み出す要因ともなっています。

Pix4Dと座標参照系の管理

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Pix4Dmaticのユーザーインターフェースでの座標参照系の選択

Pix4Dでは、内部のSRS(Spatial Reference Systems)ライブラリを使用して座標参照系を管理しています。このライブラリは、主にオープンソースプロジェクトのPROJを基盤としており、以下を含むPix4D製品で利用されています:

この内部ライブラリでは、最新のEPSGやESRIを含む座標参照系カタログを管理し、座標変換や投影の歪み計算などを効率的に実現しています。また、各国で利用可能なグリッドやジオイドモデルファイルも保管しており、一部の非公開ジオイドモデルの使用にも対応しています。

座標参照系の複雑さや繊細な特性は、Pix4Dのソフトウェアにとって非常に重要な役割を果たしています。Pix4Dでは、専任のSRSチームとオープンソースプロジェクトPROJへの貢献を通じて、業界最先端の精度と革新性を維持しています。

Pix4Dでの座標参照系の活用方法について詳しく知りたい方は、YouTubeチャンネルのトレーニング動画をご覧ください。


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