散布用ドローンによる可変施肥
Trinoo社は、農業向け散布用ドローン事業に特化した精密農業会社です。創業は2018年ですが、それ以前にもサトウキビ栽培における散布用ドローンの使用法を2年にわたり研究していました。この会社があるのは、コロンビアでサトウキビ栽培が最も盛んな地域であるバジェ・デル・カウカ県です。この地域にはサトウキビの製糖工場が14か所あり、毎年平均で240,000ヘクタールのサトウキビが栽培されています。
サトウキビの成熟促進剤の削減と生産量の予測
コロンビアで最大手のサトウキビ製糖工場の1つが、サトウキビの成熟促進剤の散布作業を効率化するとともに、ヘクタールあたりのサトウキビ収穫トン数の予測精度を高める方法を模索していました。この工場ではTrinoo社と協力することを決め、両社はプロジェクトの目標を定めるにあたり、以下のような調査項目を設定しました。:
- 画像撮影と画像データの処理に使用する機材やソフトウェア
- 作物の成長に合わせ て画像を撮影する時期
- 分析するサトウキビの品種、およびその他の要因
このプロジェクトの目標は、成熟促進剤の使用量を減らし、ヘクタールあたりのサトウキビ収穫トン数の予測精度を高めることでした。目標が達成されれば、ヘクタールあたりの生産コストが減少するだけでなく、収穫の120日前までに生産量を高い精度で予測できるようになり、工場のキャッシュフローも改善される見込みです。
プロジェクト詳細
場所 | バジェ・デル・カウカ県(コロンビア) |
プロジェクトの実施期間 | 2020年1月~10月 |
対象エリアの面積 | 600ヘクタール |
撮影画像数 | 30,000枚 |
ソフトウェア | PIX4Dfields |
ハードウェア | Parrot Bluegrassドローン(画像撮影用) DJI Agras MG-1Pドローン(散布用) Parrot Sequoiaカメラ |
画像解像度 | 8cm/pix~10cm/pix |
散布用ドローンと処方マップを使用した成熟促進剤の散布
成熟を進めるために、空中から成熟促進剤をサトウキビの葉に散布します。これにより、茎に含まれるスクロースの濃度が高まり、1ヘクタールで収穫されるサトウキビ1トンあたりの砂糖生産量が増加します。従来、この作業は各区画の土壌の状態や降水状況を考慮せずに画一的な処方で実施されてきましたが、農業管理者による調査で成長レベルが不揃いになっていることが判明しています。
また、従来は圃場内でサンプルを収集し、それを試験所で分析するという手法が標準でしたが、区画全体を正確に代表するサンプルの収集が困難であるため、分析結果にばらつきか出るという問題がありました。
精密農業を取り入れることで、作物の成長段階に応じて散布用ドローンで散布する成熟促進剤の量を増減させるという柔軟な成熟作業が可能になりました。Trinoo社はドローンとマルチスペクトルカメラを使用した画像撮影を提案しました。撮影した画像をPIX4Dfieldsで処理することで、散布用ドローンで成熟促進剤を散布するための処方マップを作成します。
サトウキビ収穫量予測アルゴリズムの開発
Trinoo社はこのプロジェクトのために、ヘクタールあたりのサトウキビ収穫トン数を算出するアルゴリズムを開発しました。これには、クライアントである製糖工場の収穫部門が推奨した植生指数などの変数が使用されます。圃場内にある調査対象区画の広さは平均で15ヘクタールに達していたため、パイロットから遠く離れた場所ではドローンの操作に遅延が生じたり、通信が途絶したりする問題がありました。
予測アルゴリズムの開発では、まず PIX4Dfieldsで植生指数を生成しました。 次に、パターン分析プロセスを実施し、それぞれのサトウキビ品種のスペクトル特徴を特定しました。さらに、その特徴とヘクタールあたりのサトウキビ収穫トン数(バイオマス量)の関連性を、分析対象のサトウキビの生育期間や品種などの変数を含めて調べました。
プロジェクトの成果
成熟促進剤のコストを20%削減
この研究プロジェクトから生まれたTrinoo社の新サービスでは、精密農業の手法と散布用ドローンを使用することで、サトウキビ農場の成熟促進剤の購入量を20%削減することができました。
「お客様にとって有意義な結果となりました。年間で約20万ドルの節約になります。バジェ・デル・カウカ県にある14の製糖工場をすべて合わせると、年間で80万ドルから100万ドルの節約になるでしょう。」そう語るのは、Trinoo社でイノベーションコーディネーターを務めるFelipe Barney Arango氏です。
サトウキビ収穫量を93%の高精度で予測
Trinoo社はヘクタールあたりのサトウキビ収穫トン数を93%の精度で予測することに成功しました。「このデータを基にして、収穫されるサトウキビのトン数を120日前までに予測できるため、会社のキャッシュフロー予測、工場の操業計画、各製糖工場の売り上げ予測の精度を高めることができます。さらに、労働力需要や製品出荷量の計画にも、このデータが大いに役立っています。」Felipe氏はそう語って締めくくりました。
PIX4Dfieldsのメリット
Trinoo社は今回の研究で、26のプロジェクトに分かれた30,000枚の画像をPIX4Dfieldsで処理しました。その際に感じたPix4Dfieldsのメリットとして、次の項目を挙げています。:
- 非常に使いやすく直感的に操作できるため、画像処理の担当者が効率的に作業を進めることができる。
- 演算能力の要件が低いため、RAMが4 GBしかないコンピュータでもPIX4Dfieldsを実行し、許容できる程度の速さで画像を処理できる。
- レポート、結果、画像、ポリゴンを簡単にエクスポートできるため、他のプロセスを組み合わせた作業を進めやすい。
- さまざまな植生指数に対応し、分析を複数組み合わせることができる。
- Trinoo社のチームがテストした他のソフトウェアとの比較や、レビュー記事を参考にすると、PIX4Dfieldsは価格性能比が非常に高く、GISの専門家ではない研究者にとって使いやすいソフトウェアであることがわかった。