新しいツールを新しい形で、採石場跡地の測量に活用
採石場は、産業界にとって大きな課題となっています。採掘中の採石場は、何トンもの資材をあちこちに運ぶ大型機器で埋め尽くされており、安全衛生規制上の懸念事項となっています。また、採石場が使われなくなったり、採石場内の別の場所に作業の中心が移されたりすると、巨大な穴が地面に残され、人や動物が落ちる危険性があるため、この問題はさらに厄介になります。英国ではこの問題に対する1つの解決策として、使われなくなった採石場を埋め立て地として再利用しています。廃棄物を穴に投棄することで、廃棄物の保存場所を確保しながら、その穴に用途を与えて規制をかけることができます。
ただし、採石場のオーナーにとっては、この埋立地を注意深く監視することが重要となります。政府機関や環境保護局への報告のためにも、穴の許容 量を分析するためにも、採石場のオーナーは採石場から埋立地に転換した場所で何が起こっているのかを正確に知る必要があります。イギリスのとある採石会社にとっても、この件は問題となりました。数か月に一度、埋立地の地表面を点検するために、数万ポンドのコストがかかっていました。採石場のオーナーにとって、費用はかかっても、それぞれの場所の埋め立て状況を適切に調査することは欠かせない作業です。そこで依頼を受けたのが、Sky Grid社でした。
建設現場とドローン測量
測量専門会社のEarth Grid社は、倉庫や物流施設の建設会社であるGlencar Construction社と提携しており、採石場の測量を依頼されました。大規模な土木プロジェクトなど、建築現場や厳重に監視される場所での測量を手掛けているSky Grid社にとって、この仕事は十分に実力を発揮できるものでした。
このプロジェクトは非常に大規模でした。Earth Grid社は、327エーカー(約1.3平方キロメートル)の土地を可能な限り正確に測量する必要がありました。同社はPix4Dcloud AdvancedとPix4Dsurveyを使用してこれを実現しました。担当者は、DJI Phantom 4 RTKのコントローラーを経由してLeica Smartnetネットワークに接続された統合SIMを使用することで、 GCPを設置することなく結果の精度を改善できました。この技術にEarth Grid社の専門知識を組み合わせることで、非常に効率的に測量プロセスを進めることができました。現地に到着してからわずか90分で、必要な画像とデータをすべて収集したのです。クライアントはデータ収集の速さに驚きました。Earth Grid社の担当者はオフィスに戻ってすぐにデータの処理を開始しました。
プロジェクト詳細
場所 | 英国 |
対象エリア | 327 エーカー(約1.3平方キロメートル) |
飛行時間 | 32分(高度120m) |
ハードウェア | Phantom 4 RTK |
ソフトウェア | PIX4Dcloud Advanced & PIX4Dsurvey |
画像撮影枚数 | 828枚 |
アウトプット | オルソモザイク, DSM, 等高線, 品質レポート |
採石場の航空測量の課題
当然のことながら、現場での作業には困難がつきものです。この プロジェクトにも、解決しなければならない課題がいくつかありました。まず、320エーカー(約1.3平方キロメートル)に及ぶ広大な範囲を1台のドローンで撮影するのですが、ドローンはパイロットが目視できる範囲で飛行させる必要がありました。そのため、フライトプランを達成するためにDJI Phantom 4 RTKを2回フライトさせることになりました。さらに、この地域の上空に航空機の航路があったため、Earth Grid社の担当者はパイロットとして近隣の航空当局にフライトを登録しなければなりませんでした。ドローンのフライトプランを計画する際には、空域の規則を遵守することが欠かせません。規則に違反すると、多額の罰金が科せられたり、地域の空域利用者や当局を混乱させたりするおそれがあるからです。特に、今回のEarth Grid社のフライトを登録することは重要でした。サイト全体を収めるために120メートルの高さから撮影したのですが、これはドローンのフライトとしては想定外とも言える高度でした。重要な規則を守るには、ドローンを目視の範囲内で運用しなければならないという規制にも従う必要があります。Earth Grid社のチームはドローンがフライトプランを完了したときに確実に目視できるよう、ミッション後半には敷地内の別の地点に車で移動しました。
採石場の正確なマッピングによる効率向上
Earth Grid社は、このプロジェクトでさまざまな課題に直面しましたが、無事に任務を完了しました。Pix4Dcloud Advancedに画像をアップロードすると、Pix4Dのサーバーで迅速に処理が行われ、5時間以内に完了しました。その後、このデータセットをPix4Dsurveyにインポートしました。非常に詳細かつ明瞭な点群が得られました。またグリッドが自動的に生成されたため、グリッドの手動作成による人的ミスが発生することもありませんでした。明確な結果が得られただけでなく、正確なジオリファレンスを行うこともできました。
Earth Grid社はPix4Dcloud AdvancedとPix4Dsurveyのアウトプットを利用して、点群の地表面部分と非地表面部分を迅速に分離し、地形全体にわずか500mmの間隔で点のグリッドを作成しました。これにより、CADソフトウェアにインポート可能な高密度の点群を得ることができました。Sky Grid社はこのデータを使用して等高線マップを作成し、詳細なオルソモザイク、DSM、QAレポートとともにクライアントに納品しました。
「このソフトウェアを使用しているのは、最適な機能を 備えていて最も使いやすいからです。Pix4Dsurveyは効率的ですし、Pix4Dcloud Advancedの共有機能と比較機能によってプロセスを全面的に簡易化できました」 - Earth Grid社オーナー、Andy Green氏
これに加えてEarth Grid社は、クライアントが検討と分析を行えるように、採石場のデジタルツインを提供しました。
測量とクラウドフォトグラメトリーの強力な組み合わせ
Pix4Dsurveyの使用により、採石場の埋め立て場所の堆積状況を非常に正確かつ効率的に追跡できるようになりました。Sky Grid社はPix4Dcloud AdvancedとPix4Dsurveyを使用することで、毎月現地を測量してオーナーに最新情報を提供することができます。それでもクライアントにとっては、3か月ごとに業者に作業を依頼するよりも安く済みます。Sky Grid社はPix4Dsurveyのアウトプットを含む結果をPDFレポートとしてまとめました。これにより、採石場のオーナーは複雑なデータセットを容易に分析できました。Pix4Dcloud Advancedのオーバーレイ比較機能と組み合わせることで、埋立地の変化を簡単に確認できます。これは、埋立地の土地利用を効率的に進めるうえで、非常に役に立ちます。
Earth Grid社は、Pix4Dソフトウェアのさまざまな機能を活用して調査結果をクライアントに正確に伝え、これまでにない形で現場を表現することができました。
編集者注:このプロジェクトは2020年7月に完了しましたが、その後にワークフローをさらに簡素化するTIN生成機能などの新機能がPix4Dsurveyに追加されています。