単独飛行:延べ115キロメートルの高速道路を空中から1人で調査
スイスのヴォー州、フリブール州、ジュラ州を結ぶ州間高速道路は、総延長100キロメートルを超えています。道路沿いのフェンスは、周囲の景色に比べれば重要性が感じられないかもしれませんが、森林管理コストの分担を決める際には、フェンスと周辺の樹木や森林との位置関係を把握することが欠かせません。
高速道路に隣接する森林を、スイス連邦道路局(OFROU)と地方自治体(コミューン)のどちらが監理するかについては、明確に決まっていない場合があります。
まずはフェンスの位置を正確に特定する必要があります。OFROUが延べ115キロメートルの道路の地図作成を依頼したのは、Corvus MonitoringのJulien Lieb氏、たったの1名でした。
プロジェクト詳細
会社 | Corvus Monitoring |
顧客 | OFROU |
プロジェクト日程 | 2018年1月~4月 |
プロジェクトサイズ | 115 kilometers |
GSD | 3cm/px |
ソフフトウェア | Pix4Dmapper |
ハードウェア | eBee - SODA |
アウトプット | オルソモザイク、2Dシェイプファイル、フライスルー動画 |
空への起業
Corvus Monitoringは、小型ドローンによる地図作成サービスを提供している企業で、フランスとスイスで事業を展開しています。オーナー兼オペレーターのJulien Lieb氏はパイロットと電気技師の資格を持ち、独学で写真測量を習得しました。「Pix4Dmapperのライセンスを入手し、友人の家や自宅近くの空き地などの3Dモデルを作成しました。Pix4Dのマニュアルが私の親友でした。」とLieb氏は笑いながら話してくれました。「Pix4DコミュニティにはDIY精神の持ち主がたくさんいて、写真測量だけでなく、航空測量についても多くのことを学びました。」
「写真測量を学び始めて半年も経たないうちに、仕事を辞めて、Corvus Monitoringを起業しました!」
単独飛行
春が近づいてきました。間もなく芽吹いた葉でフェンスが覆われてしまうため、急がなければなりませんでした。
急ぐだけでなく、天気予報にも注意する必要があります。さらに、ペイエルヌ飛行場の周辺は週末にしかドローンを飛ばすことができなかったため、綿密な飛行計画を立てる必要がありました。
延べ115キロメートルの飛行は、3~5キロの区間に分けて行われました。eBeeとSODAカメラを使用し、1回のフライトで600枚から1,200枚の写真を撮影しました。この狭く長大な高速道路を撮影するにあたり、Lieb氏は2本の平行な飛行経路を計画し、オーバーラップ率を非常に高く取りました。オーバーラップ率は90%、サイドラップ率は70%でした。
OFROUは自局のGISで使用している地図との完全な一致を求めていたため、Lieb氏は各サブプロジェクトに約15個のコントロールポイントを設定しました。ただし、それは地上に設置して測定する通常のグラウンドコントロールポイントではなく、20cmの解像度を持つSwisstopo(連邦地形局)のオルソ画像から抽出したものでした。
Lieb氏は、地上の柱や標識などの目立つ特徴からコントロールポイントの座標を抽出し、Pix4Dmapperにインポートする必要がありました。この作業は、このプロジェクトの中でも最も手間のかかる作業で、数日かかりました。
Lieb氏は研修中の部下の助けを借りながらも、プロジェクトの大部分を1人で管理しました。「すべての作業を終えた後、Pix4Dを自分の脳の延長のように感じるようになりました。もう他のソフトウェアを使うことはできないでしょう。」
航空測量の「巨大な」メリット:安全性と2倍のスピード
OFROUは、Swisstopoのオルソモザイクの上に2D Shapefileをオーバーレイすることを求めていました。この最終成果物を得るために、Lieb氏は3~5キロメートルの区間をQGISに統合し、フェンスを手作業でデジタル化しました。
自治体の関係部局から森林管理会社まで、さまざまな関係者と協力して作業ができるように、スイスのWebGIS開発会社であるIpogéeが開発したオンラインツールを使用して、フェンス周辺のバッファー地帯を示すデータと有益なメタデータを提供しました。
OFROUは、樹種などの追加データ(ベルン応用科学大学が開発した自動検出アルゴリズムを使用して抽出)を組み合わせることで、維持管理にかかる予想コストを正確に見積もり、計画に組み込むことができました。
Lieb氏はオルソモザイクの製作に加えて、自らの仕事の質の高さをアピールするために、25キロメートルを超える高速道路のフライスルー動画を作成しました。「これには、Pix4Dmapperで6つのサブプロジェクトを一括統合(マージ)する必要がありました。」
これまでOFROUでは、このような成果物を得るために、測量士に依頼して、道路沿いに手作業で測定を行っていました。現場の上空を飛行することで、より安全に作業を進めることができました。
Lieb氏は次のように考えています。「ドローンでの空撮測量には、地上測量よりもはるかに大きなメリットがあります。私はわずか2か月強の期間で115キロメートルの道路を調査しました。つまり、両側で230キロメートルのフェンスを調査したことになります。フェンスの周囲には植物が生い茂っていることが多いため、徒歩で作業した場合、健脚で経験豊富な測量士でも1日に測量できるのは2キロ程度でしょう。またその場合、得られるアウトプットはShapefileだけです。一方、Pix4Dのソフトウェアを利用した私は、Shapefileに加えてオルソモザイクや点群を作成し、他のさまざまなプロジェクトに使用することができました。」