維持補修から管理へ:ドローンマッピングの導入
幹線道路資産の管理を担当する組織は、事後対応的な維持補修を行う組織から、動的で戦略的なプランニングを行う組織へと変わりつつあります。
その変化を促しているのが、測量業界に新たに出現したドローンやフォトグラメトリーソフトウェアなどのテクノロジーです。この2つを組み合わせたものが、一般的にドローンマッピングと呼ばれています。組織でドローンマッピングを利用することで、運用上の課題に対処し、頻繁に点検を実施したり、最新のデジタル資産データベースを作成したりできます。
インフラ管理組織の役割は、道路網のライフサイクル全体にわたり、コスト、リスク、パフォーマンスのバランスを維持することです。インフラ資産管理組織のミッションはそれぞれ異なりますが、道路交通の安全リスクと環境 への影響を最小限に抑えながら、道路網のパフォーマンスを保証することが使命であるという認識は、おおむね共通しています。基本的には、資源と物資の流通、つながり合った地域のアクセス性と経済発展、その地域に住む人々の移動利便性を確保することが求められています。
資産を定期的に点検し、適格性を確認することが重要
対策のコストと効果のバランスを取るには、現在および未来における資産の技術的な状態とパフォーマンスを把握する必要があります。
運用面を見ると、最新のデータベースを維持し、道路や橋などの土木対象物の定期的な調査を行うことは、これまでコストと時間がかかる作業と考えられてきました。ドローンをデータ収集ツールとして使用し、フォトグラメトリーソフトウェアでデータをデジタル空間モデルに変換することで、このような運用上の課題を解消できます。
ドローンマッピングにより、さまざまな運用上の課題に対処
交通規制により発生するコストを削減 従来の測量方法では、幹線道路を数時間にわたって通行止めにする必要がありました。ドローンマッピングのミッションは20%の所要時間で実施でき、交通規制も不要です。交通管理の統計情報、さらにニューサウスウェールズ州道路海事局の経済性評価マニュアルによると、交通規制で発生する1時間あたりのコストは、中央分離帯のない主要道路で約10,000豪ドル、中央分離帯のある主要道路で25,000豪ドル、高速道路で80,000豪ドルと見積もられています。
高価な機材や大規模なチームが不要 データ収集ミッションには、トータルステーション、高い費用をかけて育成された専門性の高いオペレーター、大規模なサポートチームは不要です。ドローンパイロットは少人数のチームと協力して、このような測量を効果的に行うことができます。フォトグラメトリーソフトウェアの専門家は、現場でも離れた場所からでもデータを処理できます。
現場測量が短時間で完了 従来型の土地測量では、地表から見える資産しか測量できないため、幹線道路の10kmのデータ収集ミッションで通常10時間かかります。しかしドローンを使用すると、上空から見えるすべてのものを2時間以内に撮影し、視覚的なデータにすることができます。
限定的な地理空間データをアウトプット フォトグラメトリーソフトウェアは、画像を測定可能な3Dモデルに変換 するだけではありません。データを視覚的な情報に変換して、すべての資産の最新の視覚的データベースを提供することで、データによる目視点検を実現します。
測量担当者や現場作業員の安全確保 従来型の土地測量では、アクセスが困難な場所、森林、複雑な地形、不安定な地層などを測量する場合に、測量担当者や現場作業員の安全性の問題が生じます。ドローンマッピングなどの空撮手法を使用することで、事故や曝露のリスクを軽減できます。
人的ミスの解消. 不注意、勘違い、疲労などが原因で、大きな不一致が生じることがあります。ドローンマッピングでは、手書きメモや手動のデータ入力システムに頼ることはありません。フォトグラメトリーソフトウェアは、画像と専用センサーのジオタグからデータを抽出します。
ドローンマッピングの実例
GeoSense社のCTOであるVassilis Polychronos氏が、ギリシャ北部の自動車道路A5での資産管理にドローンマッピングを使用した経験を語ってくれました。この事例を見ると、幹線道路の資産管理にドローンマッピングを使用する利点がはっきりとわかります:
「このプロジェクトの目標は、11kmの新しい幹線道路の資産管理のための文書作成と、その周囲80mの範囲の現況調査を実施することでした。クライアントは10cmの精度を求めていました。
幹線道路は山岳地帯に囲まれた平原にあります。地形の高低差が大きいという課題があり 、求められる精度を念頭に置きながら、地形条件に合わせてミッションを計画し、適応させなければなりませんでした。
使用したのは、S.O.D.A.カメラを搭載したRTKドローンであるsenseFly eBee Plusです。ミッション計画の作成には、senseFlyのプランニングソフトウェアであるeMotionを使用しました。このソフトウェアでは、SRTM DTMモデルに従ってコリドーマッピングミッションを設計できます。
2時間以下の飛行で1,300枚の画像を撮影し、幹線道路11km、3.7km2の範囲をマッピングしました。eBee Plusに搭載されたRTK GNNS受信機により、高精度のジオタグを画像に付与することができました。
データセットの処理には、デスクトップPCとPIX4Dmapperソフトウェアを使用しました。その結果、平均GSDは3.17cmとなりました。4つのチェックポイントでプロジェクトの精度を評価したところ、DXとDYの平均は1.2 x GSD、DZは2 x GSDでした。この結果は、クライアントが求める10cmの精度を大きく上回っていました。私たちは、.las形式の3D点群、.fbx形式の3Dテクスチャメッシュ、オルソモザイク、DSMを納品しました」
「幹線道路の資産管理にドローンマッピングを使用すると、従来型の測量と比べて80%以上の時間を削減できますが、メリットはそれだけではありません。ドローンマッピングは邪魔にならないため通行止めの必要がなく、幹線道路を通常どおりに運用しながら測量を行うことができます。Pix4Dmapperで作成した豊富なデータと高精度の成果物は、クライアントの当初の要求を上回るものとなり、現実の幹線道路をデジタル世界に精密に再構築したモデルを提供できました」—GeoSense社CTO、Vassilis Polychronos氏
幹線道路の資産管理にドローンマッピングを採用
ドローンとフォトグラメトリーソフトウェアは、スマートな資産管理への移行を後押しします。インフラ資産管理者は、ドローンマッピングを実施し、資産の最新のデジタルデータベースを作成することで、資産の調査、点検、管理を頻繁に行い、動的で戦略的なプランニングの基盤を築くことができます。