PIX4Dcloudで発注元との情報共有(3次元データ)の効率化
砂防堰堤は、背面のポケットで土石流をせき止めることで、下流における被害を防止・軽減する役割を担っています。長野県にある滑川は土砂移動の活発な急流河川であるため、土石流が多発し、除石を行う回数が多くなります。そのため、効率的な除石方法を検討する必要があり、多治見砂防国道事務所から除石計画の検討を依頼されました。
株式会社三栄コンサルタントの近藤さん、瀧澤さんにどのようにPIX4DmapperとPIX4Dcloudを活用して、作業を効率化したのかをお聞きしました。
課題:
毎年取得している3次元データの利用
従来、このような堆積土砂の状況把握は、地形測量と縦・横断測量による2次元のデータを利用するのが主流でした。しかし、2次元の地形図や縦・横断図では現場の空間把握が難しく、関係者で現場に対する共通認識を得るためには、空間把握が容易な3次元データが最適と判断しました。
一方、3次元データは容量が大きく外部との共有が難しいという課題があります。また、発注者には3次元データ(点群)を直接閲覧できるソフトウェア環境に制限がありますが、ブラウザであれば簡単に共有が可能です。
今回は、上記の条件に合ったPIX4Dcloudによる堆積状況の傾向を把握する方法を提案しました。他社の点群処理ソフトウェアも検討してみましたが、点群の共有に特化した機能がなく、さらにプロジェクトごとに課金がされる仕組みだったため、費用対効果が見込めないと判断しました。
プロジェクトの詳細
撮影場所 | 日本、長野県、滑川第1砂防堰堤周辺(多治見砂防国道事務所) |
ユーザー | 株式会社三栄コンサルタント |
ソフトウェア | PIX4Dcloud, PIX4Dmapper TREND-POINT (詳細解析に利用) |
ハードウェア | DJI Matrice 300 RTK |
撮影範囲 | 16ha |
撮影画像枚数 | 約600枚 |
処理用 ハードウェア | Intel Xeon W-1270P, CPU @ 3.8 GHz 64GB RAM, NVIDIA QUADRO RTK 5000 GRAPHIC |
導入の成果:
クラウドを利用して作業を効率化
滑川第1砂防堰堤において堆積土砂の状況をドローンで上空から写真撮影を行い、現地でPIX4Dmapperを使用し3次元データを作成しました。従来の平面、縦・横断測量を行った場合はトータルステーションでのデータ取得に1~2週間かかっていたところ、ドローンとPIX4Dmapperを使うことで作業時間を半日(準備・片付け含む)にまで短縮できました。また、従来の測量(平面、縦・横断測量)に比べ、取得する測点が圧倒的に多く、精度の高い地形モデルが構築可能となりました。
PIX4Dmapperでの処理後、プロジェクトをPIX4Dcloudに共有すると、共有用のリンクが発行されます。さらに、発注者はリンクを通じて、PCやモバイル端末で3次元データを確認することができます。(リンクはデータの所有者側でいつでも非有効化できます。)
クラウド上のデータはタイムライン上で閲覧でき、過去のデータを取り出して比較するのも簡単です。発注者の方からも「堆砂及び掘削後の状況が分かりやすい」と好評でした。
2画面の比較機能を使うと経時変化も見せやすく、紙での報告資料と比較して、伝えられる内容が格段に広がりました。その結果、報告資料を作成する手間も大幅に削減することができました。
引用コメント メッセージ
"PIX4Dcloudは、発注者と同じ認識を持つために必要なツール。高性能なパソコンが不要で、普通のPCやスマートフォンで閲覧できるのもうれしいです。"
- 株式会社三栄コンサルタント 名古屋支社 技術部 瀧澤 氏
会社情報
東 海エリアを基盤とした地域密着型の建設コンサルタントとして、道路、橋梁、河川、砂防、など多種多様化する社会インフラの構築に携わる。東京、滋賀と業務範囲も拡大する中で、最先端技術を積極的に導入し、業務の効率化、生産性の向上を図っている。