Aerial map of a refugee camp

リスクを軽減するために:世界最大の難民キャンプをマッピング

常に更新される高解像度マップにより、世界最大の難民キャンプを災害から守り、居住者50万人への被害を軽減することが出来る。
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バングラデシュのコックスバザールにトゥパロン難民キャンプが設立されたのは、1991年でした。しかし、迫害から逃れようと殺到した難民により、同地域の資源が逼迫しています。 International Organization for Migration (IOM)は、ドローンマッピングとPix4Dを活用して、こうしたロジスティクスの問題への対策に取り組んでいます。

「これまで、この場所に地図はありませんでした。」と、IOMのGIS責任者であるSebastian Ancavil氏は語ります。「2017年8月に難民が殺到してくるまで、このあたりは僻地だったため、詳細な地図が作られなかったのです。キャンプは大幅に拡大しており、当初は数千個程度だったシェルター数が今では十万個を超えています。」

2019年1月時点で、OpenStreetMapデータベースにはおよそ150,000個のシェルターが登録されています。

drone aerial photography of a refugee camp
クトゥパロン難民キャンプのシェルター | OpenAerialMapで見てみる

プロジェクト詳細

ロケーションバングラデシュ、トゥパロン難民キャンプ
プロジェクト日程継続中: 2017年9月 - 現在
ハードウェアSensefly eBee Plus
DJI Mavic Pro
ソフトウェアPix4Dcapture
Pix4Dmapper フォトグラメトリ―(SfM)ソフトウェア
Pix4D Cloud
GSD5 ~ 15cm
アウトプットオルソモザイク
標高モデル
軽くてダウンロード可能なPDF
モバイルアプリで使用するための画像
人道的対応プラットフォームへシェアするマップ

コミュニティに声を

クトゥパロン難民キャンプは、管理の効率化のため、20個程度のサブキャンプに分けられています。これらのサブキャンプがさらに約1,600個のブロックに分けられています。各ブロックにはマジ(Mahjee)と呼ばれる情報管理者が1名配置され、およそ百世帯が収容されています

Map of a refugee camp divided up into blocks
クトゥパロン難民キャンプの‘マジ(Mahjee)ブロック | このマップをオンラインで見る

ドローンマップは、こうした境界を画定したり、スタッフがキャンプ内を移動したりする際に役立てられています。IOM、人道支援パートナー、その他の支援職員は、衛生設備、給水所、川などの主要ポイントをこのマップ上にマークしています。

最新版の地図は、OpenAerialMapとHDXからジオリファレンス処理済みの軽量画像パッケージおよびPDFファイルとして誰でもダウンロードできます。ほとんどの携帯電話、さらにSW MapsやMapTilerなどのモバイルアプリからアクセスできます。できるだけ多くの人がこのプロジェクトで提供されるデータにアクセスできるように、マップパッケージのサイズは40MB程度に抑えられています。

IOMチームは当局と連携し、ドローンマップで割り出した戸数データとタブレット端末を使って収集されたデータを組み合わせて、キャンプの推定人口を定期的に算出しています。慈善支援団体はこうした最新の推定値を基にして、食料、水、医療用品の配布を行っています。

Ancavil氏は次のように語っています。「私たちが行っているのは正確な人数を把握する人口調査ではありません。マジの協力を得ながら、マジブロックの境界を画定し、各マジの担当シェルターを決めています。さらに推定人口を算出し、人々のニーズを判断しています。人口は急激に増加していました。こうした対策を行うことで、2週間ごとに更新された推定人口を算出し、人々のニーズを深く把握することができました。」

「コミュニティの声」:IOMのメンバーによるクトゥパロン難民キャンプでのドローンマップ活用例の紹介

現実に即してドローンを運用

変化の激しい状況の中で、IOMチームには柔軟な対応が求められます。

IOMにとっては、現地スタッフをドローンパイロットとして訓練し、さらに画像処理やさまざまなマッピングアウトプットの生成をこなせるように教育することが至上命題でした。ジュネーブからAncavil氏のようなドローンパイロットを招聘して一時的に雇用するというやり方は、長期間の運用には向かないからです。IOMはその代わりに、現地スタッフのトレーニングに力を入れました。その1人が、Presler Jean氏です。Ancavil氏からトレーニングを受けたJean氏は、ハイチ地震での活動以降、IOMの協力者としてUAVを担当しています。Jean氏は現在バングラデシュを拠点とし、クトゥパロン難民キャンプでフルタイム職員として活動しています。

Working with a multiroter drone
Flying a Sensefly eBee drone
UAVs現地の様子:IOMの現地GIS担当スタッフ。Presler Jean氏(左図)と、Umme Salma氏(右図中央、eBeeを抱えている人物)。

IOMは、クトゥパロン難民キャンプの難しい状況にも対応できるワークフローを策定しました。月に1回か2回、状況によってはそれ以上の頻度で、新しいオルソモザイクマップを作成するというものです。

地表と状況が目まぐるしく変化するため、プロジェクトの進行に合わせて新しいグラウンドコントロールポイント(GCP)を追加しなければなりませんでした。「最初のドローン測量を行った2017年10月の時点では、キャンプの半分以上が空き地でした。今では、シェルターで一杯です。」と、Ancavil氏は語ります。

「通常は、2日間で10回のフライトをこなしています。過去には、状況や突発的な事態に対応するために、マッピング作業を大急ぎで行ったこともありました。朝にフライトを行い、同じ日の午後にはマッピング結果を出力しました。」(Ancavil氏)

1つのデータセットだけでも9GB、写真1,200枚に上ることがあります。そのため、画像データは現地で処理せずにPix4D Cloudにアップロードしています。

画像データはPix4D Cloudプラットフォームとジュネーブにある専用サーバーで処理されますが、その作業はIOM本部のAncavil氏またはバングラデシュのチームが行います。

「バングラデシュのチームは、ネットワーク接続の帯域幅が非常に狭くてもサーバーにリモートアクセスできます。大キャパシティのCPUに加え、Pix4Dmapperで必要な大容量のRAMも利用できるため、小型コンピューターであっても大規模データセットを処理できます。」(Ancavil氏)

Working with Pix4Dmapper in the field
Creating a 3D map in Pix4Dmapper
(左図)IOM職員の指導を受けるISCG(Inter-Sector Coordination Group)の現地IM/GISスタッフ。(右図)Pix4Dmapperでのクトゥパロン難民キャンプのマップ処理。

プロジェクトの地上解像度は5~15cmが確保されています。

処理後のオルソモザイク、GIS画像パッケージ、空撮写真は、OpenAerialMapおよびHDXで共有されています。また、この成果物はPDFおよび小サイズ画像に圧縮され、パートナー、キャンプ管理者、現地IOM職員に共有されています。

災害対策

キャンプが拡大するにつれ、新たなシェルターを安全に設置するために地形マッピングが利用されるようになりました。キャンプ地周辺の測量およびマッピングにより、雨季に災害が発生するリスクがある場所を特定し、モンスーンの到来前に居住者を高台に避難させています。

Earthworks in a refugee camp
drone map of a refugee camp
豪雨時に危険な状態になる恐れがある造成地や河川を示した空撮写真

「このプロジェクトを始める前は、何のデータもありませんでした。最新の衛星写真すらないのです。9月に入手した衛星写真も、雲が多く非常に不鮮明なものでした。それが今では、150,000~160,000個のシェルター、河川、給水所、トイレ、道路のデータ化が完了しており、オープンソースプラットフォームでキャンプのすべてのインフラを誰もが見られるようになっています。」(Ancavil氏)

Aerial map of a refugee camp
トゥパロン難民キャンプには150,000を超えるシェルターと建物がある | OpenAerialMap & Open Street Mapで見てみる

無人空撮ソリューション

「ドローンは、もっと多くの組織が利用すべきソリューションであると思います。本プロジェクトの運用は、本部の支援を受けながら現地側のスタッフが行っています。無人空撮システムの適切なトレーニングを受ければ、現地のスタッフでもドローンを飛ばし、Pix4D Cloudに画像をアップロードできるようになります。これにより、最初のアウトプットを現地で入手できます。本部では、点群、標高モデル、画像処理を実施し、必要に応じて他のアウトプットを提供できます。」(Ancavil氏)。

「ドローンを扱う人が、GISやマッピングのエキスパートである必要はまったくありません。少額の設備投資さえ行えば、必要なマップをごく簡単に、しかも迅速に入手できるのです。」

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