地下へ飛ぶ：3Dモデルを使用した鉱山の調査
鉱業においてドローンを利用するメリット は、露天掘り鉱山では様々な利用事例 で繰り返し 実証されています。
一方、地下鉱山には独特の困難さがあります。
人の肩幅ほどしかない狭い坑道では、ドローンの飛行は不可能です。
しかし、新しいユニークなドローンがこの問題を解決しました。
FlyabilityのElios 2ドローンが、直径3メートル以下の狭い坑道での飛行に成功したのです。ドローンから送られてくる画像は、Pix4Dmapperで処理されました。
プロジェクト詳細
| 場所 | Golden Sunlight Mine アメリカ合衆国、モンタナ州 |
| 鉱山会社 | Barrick Gold |
| UAV オペレーター | Unmanned Aerial Services Ltd |
| ハードウェア | FlyabilityのElios 2 ドローン |
| ソフトウェア | Pix4Dmapper |
Elios 2ドローン：危険な環境に対応できるユニークなハードウェア
FlyabilityのElios 2ドローンは、狭い空間を飛行できるよう特別に開発されました。この回転翼ドローンはフレームで囲まれて おり、壁、インフラ設備、さらには人にぶつかっても、対象を傷付けることがありません。通常のドローンではとても行けない場所に入り込むことができます。
Barrick Gold Corporationの地盤工学エンジニア、Ryan Turner氏は、次のように述べています。「1年前の自分なら、そんなことはあり得ない言っていたでしょう。地下で多くのドローンを失いましたから。3日間で5機のドローンを地下に飛ばしましたが、1機も失いませんでした。これは明らかに何かが違います。」
ハードウェアの詳細については、Flyabilityのブログをご覧ください。
地下鉱業におけるマッピング
地下鉱山では調査がきわめて重要です。
岩石や鉱物を爆破す ると、後に不安定な岩クズが残り、誤って足を取られてしまうことがあります。また、採掘場に小型車ほどの大きさの岩石が不安定な状態で残るため、現場の全体的な状況を把握しておくことが重要です。
従来は、カメラを地下に下ろしたり、ポールに取り付けたカメラを調査エリアに挿入したりする方法が取られていました。しかし、これらの方法には限界があり、全体像を把握することはできません。
Turner氏は次のように説明しています。「私の仕事は、作業場が安定しているか、作業員の上に岩石が落下しないか確認することです。特に難しいのは、あまり情報がないエリアに入り、そこが安定しているかどうかや、設備や作業員の上に岩石が落下するなどの問題が発生しないかどうかを見極めることです。」
落石は作業員だけでなく鉱山機械にとっても危険です。1つ1つの機械が非常に高価ですし、スリップしただけで壊れることもあります。
また、価値のある鉱石に廃石が混入したり、鉱石が完全に失われたりすると、収益に影響が生じる可能性があります。
これらの問題を回避するために、Barrick Gold Corporationは、採掘場の詳細な3D写真測量図を作成したいと考えていました。
Turner氏は、そのプロセスを次のように説明しています。「どの程度のオーバーブレイクが発生したのか調査しようと、採掘場の中にElios 2を飛ばしました。すると、岩壁の表面が剥がれ落ちた箇所がいくつも見つかりました。特に、西側のリブに大きなスラブが現れていました。」
岩石は時間が経つと自然にずれ動いたり、隣接するエリアの爆破の衝撃で動いたりするため、翌日も同じ飛行を行いました。2つの写真測量モデルを比較することで、オーバーブレイクが発生した場所を確認し、作業員への危険性、設備へのリスク、鉱石の損失の可能性を見積もることができます。
より安全な作業環境のための正確な結果
鉱業分野では一般的にドローンを貯鉱量の測定に使用していますが、この事例では、測定だけでなく目視調査にも活用しています。これは、Elios 2のライブフィード機能によって可能になりました。
Turner氏は次のように述べています。「Elios 2を使うことで、表面が剥がれ落ちた岩壁を確認できました。画像は非常に鮮明でした。」
調査チームは地上に戻った後で、Elios 2のデータをPix4Dmapperに読み込みました。
採掘場の相対精度が優先されるたため、グラウンドコントロールポイントは使用しませんでした。
Turner氏とBarrick Goldのチームは、Pix4Dmapperで作成した3Dモデルを使用することで、鉱山での作業に関する意思決定をより多くの情報に基づいて行い、また潜在的な危険を発見することができました。
Turner氏は次のように振り返っています。「マッカー（廃石を運搬する機械）に落石が当たると壊れてしまう可能性があるので、マッカーの真上に落下しそうな岩石がないかどうかを確認できました。撮影した映像をオペレーターに見せることで、頭上がどのような状態かを伝えることができました。」
調査チームは鉱山の詳しい全体像を把握できただけでなく、鉱山の状態を3Dモデルとして記録することができました。また、爆破後の落石状況を正確に追跡し、将来に役立つ貴重な情報も得られました。
近付くことが難しい地下鉱山を3Dモデル化して調査することで、鉱山作業員が安全な状況で働けるようになるほか、会社の収益にもプラスの影響を与えます。
また、このような前例のない使用例は鉱業以外の産業にも応用できる可能性があり、Elios 2とPix4Dmapperの新たな地平を切り開くことになるでしょう。
