フォトグラメトリーとAR(拡張現実):新しい旅のカタチ
コロナや渡航規制により、旅行計画をキャンセルしなければならなかった人も多いはずです。新しい場所を探索する機会を逃すことは、特に外へ出て観光することを楽しみにしている人にとっては残念なことです。韓国の済州島は、非常に人気の高い観光地です。2019年当時、地元住民がわずか66万人であるのに対し、通常、年間1500万人もの観光客が訪れていました。この島は、美しい滝や手つかずの森、のどかなビーチがあることで知られています。
DO2として知られるDrone Orange Coは、ソウルだけでなく済州島にもオフィスがあり、フォトグラメトリーを用いて、南国の島の 一部をデジタル化するなど、さまざまなプロジェクトに取り組んでいます。今回のプロジェクトでは、最新のスキャン技術を駆使して、島のAR(拡張現実)を作成したいと考えました。最初は、360度画像を使って、ある地点からの完全なパノラマビューを作成しました。<a href="">2019年には、フォトグラメトリーとドローンを使って、拡張現実(AR)や仮想現実(VR)のヘッドセットで使用するデジタルレプリカを作成するまでになりました。また、島を訪れた人は、オンラインで島を探索することもできます。今回、DO2はこれを進化させ、デジタル版の島をベースにした双方向の情報配信ソリューション「Infinity World XR」を開発しました。フォトグラメトリーを新たな体験手段として活用し、拡張現実(AR)で見た後に現場でソリューションを提供することを目的としています。
拡張現実(AR)のためのフォトグラメトリーモデル
2019年に島の一部のデジタル化を開始した際、DO2はPIX4Dmapperを使って島のある区域を再現し、新しいインタラクティブメディアとして注目を集めました。そのアウトプットは、済州島世界遺産のVRフライトシミュレーターや、ランドマークを探索するための拡張現実(AR)プログラムに取り込まれました。PIX4Dmapperから出力された3Dデータを使って、島の象徴的な部分を正確にプリントした3Dレプリカや、仮想現実(VR)のジオラマを作成しました。
そのために、双方向の位置情報技術を開発し、PIX4Dmapperと連携してデータ解析を超えた取り組みを行いました。拡張現実(AR)の位置情報登録技術の開発は、正確なドローン空間データを用いることで実現しました。はるかに進化しているこの技術は、360度画像や動画よりも高品質なアウトプットが得られ、適応可能な「飛行ルート」や「視界」、歪みのない正確な3Dによる奥行きが得られるため、より詳細な情報が得られます。彼らは、ドローンからのジオロケーションデータを使って、ロケーションベースのAR(拡張現実)プラットフォームを開発しました。
現在、島の単一の飛行経路から島全体を網羅できるようスケールアップするために、チームは広域の地図や3Dモデル作成に適するよう特別に設計されたPIX4Dmaticに移行しました。
プロジェクト詳細
ユーザー | Drone Orange |
場所 | 韓国・済州島(チェジュ島) |
ソフトウェア | PIX4Dmapper PIX4Dmatic |
ハードウェア | DJI Phantom 4 Pro |
測量対象エリア | 480平方キロメートル |
1フライトあたりの収集画像 | 280 - 300枚 |
総画像数 | 300,000 |
処理時間 | 3,000枚の画像で13時間 |
処理用ハードウェア | AMD Ryzen Threadripper 3990X, 256 RAM, GeForce RTX 2080 SUPER |
GSD | 3 - 5 cm |
ドローンによる大規模な測量
以前、DO2はユネスコ世界遺産の正確な3Dモデルを作成することに成功しました。韓国の最高峰である漢拏山(ハルラサン)です。フォトグラメトリーは、ブラジルのコルコバードのキリスト像のような国の重要な場所の測量にも有効なツールです。今回、DO2は政府だけでなく、済州ユネスコ世界遺産センターからも特別な許可を得て、測量を行いました。これは、楯状火山で標高が1950メートルであることや、標高が高いと天候が非常に変わりやすいことなどから困難を極めました。チームは6時間かけて山頂に到達しましたが、山頂での天候安定の保証は一切ありませんでした。クリアな状況で飛行出来たのはほんの2時間しかなかった為、できるだけ多くの画像を収集するために、迅速に行動する必要がありました。
AR(拡張現実)ソリューションでは、リアルな再現を行うために、正確な位置情報が不可欠です。このようにドローンによるフォトグラメトリーを利用したプラットフォームは前例がなかったため、チームはモデルをホストするためのプラットフォームを独自に開発する必要がありました。現在は、PIX4Dmaticへデータを追加して、島の480平方キロメートルをカバーしています。
「私たちは、産業用ドローンを利用して、データを仮想現実(VR)や拡張現実(AR)の技術に取り入れることで、人間の視覚や感覚を広げることができると考えています。これまで、VR/ARコンテンツ、融合技術体験ゾーン、済州島関連の体験コンテンツなどを手がけてきました。これまでの実績をもとに、素晴らしい拡張現実(AR)体験プラットフォームの構築を目指しています。」 とDO2は話しています。
拡張現実(AR)観光とさらなる応用
DO2が作成したデジタル化された現実は、済州島を新たな人口層にもたらし、済州島へのアクセスをしやすく旅行への負担を軽減しました。コロナ禍におけるソーシャルディスタンスを保つこともできます。ドローンの正確な空間データを利用することにより、説明文、ラベル、グラフィック、ビデオなどの情報が、ユーザーの実際の位置に合わせてプラットフォーム上に表示されます。これにより、済州島での旅行がより簡単になり、いつでも簡単に入手できる情報により一層ワクワクするものになります。これは、政府の規制や制限を遵守しながら、島を超えて文化的価値を共有し、ユネスコ世界遺産をより身近なものにするコロナツーリズムの革新です。
このようなプラットフォームは、建設、不動産、公共安全など、さまざまな分野ですぐにごく一般的になるでしょう。現場での効率的な情報収集や、物理的な制約を超えた体験を可能にし、来場者の体験の幅を広げることができます。仮想現実(VR)への没入感という点では、非常に興味深いものがあります。