Reconstructing a complex structure with photogrammetry

「大量の写真を撮影すべし」:複雑な構造物の3Dモデル化

自身の経験の中で最も複雑なモデルだったのに、最も簡単に作成できた。そんなことがあるでしょうか。その答えは、適切なプランニングと、大量の写真にありました。

フィンランドの製材・木材加工会社であるPölkky Oy社は、重要設備の更新にあたり、不動産部門のマネージャーであるJaakko Laihola氏に現地と機材のモデル化を依頼しました。

アマチュア写真の趣味が高じて写真測量の技術を身に付けたLaihola氏は、これが自身の経験の中で最も複雑なモデルであった一方で、最も簡単に作成できたと語っています。

プロジェクト詳細

会社Pölkky Oy
ロケーションクーサモ、フィンランド
日付2018年8月
プロジェクト期間1週間
画像数空撮写真 755枚
地上写真 646枚
ハードウェアDJI Phantom 4 Pro(空撮写真)
Canon EOS 6D + EF 17-40 f4.0(地上写真)
ソフトウェアPix4Dmapper
GSD0.5 cm

Pix4D製品の意外な活用法

Pölkky Oy社では、木片やおがくずなどの廃棄物の量を測定する日常業務に、Pix4Dmapperを利用していました。

しかし、インフラのマッピングは同社にとって初めての取り組みでした。丸太測定装置は、丸太の状態を調べて木材加工の作業効率を高めるために欠かせない、重要な設備です。この設備を更新し、能力の高い機器を導入することが目的でしたが、まず約2.5 x 2.5メートルもの巨大な機械を撤去した後で、新しい基礎を作成し、新しいX線機材の土台に丸太コンベアの振動が伝わらないようにする必要がありました。

撤去される機械の2Dマップ
撤去が必要な機械の2Dマップ

このプロジェクトについて、Laihola氏は次のように語っています。「私がこれまで手がけた中では、最も複雑なプロジェクトでした。クレーンやチェーンなどが無数に含まれていて、複雑な構造物を形成していました。そこで、なるべく正確にモデル化できるよう、初めて試みとして大量の写真を撮影しました。」

完成したモデルには、写真測量ではモデル化しづらい手すりなどの細かな機械設備がはっきりと示されています。このモデルからは、Laihola氏のPix4Dmapperのスキルの高さと、プロジェクトにかける情熱が伝わってきます。「時間はかかりましたが、そう難しい作業ではありませんでした。」(Laihola氏)

狭まった箇所を写真測量法でモデル化
とても細かい部分がある対象物もフォトグラメトリ―を用いれば再現できる

撮影作業

テクスチャや奥行きに富んだ複雑な構造をモデル化するにあたり、Laihola氏が選んだ作戦は、とにかく大量の写真を撮影することでした。

地上撮影と空撮は1日で完了しました。地上撮影にはCanon EOS 6D DSLRとEF 17-40 f4.0レンズを使用し、焦点距離17 mm、絞りf8.0で撮影しました。レンズの広い画角を活かして、1枚あたりの情報量を増やしました。また、画角の広さはオーバーラップの確保にも役立ちました。撮影の安定性を高めるために一脚を使用しましたが、三脚を使用すればもっと安定したでしょう。

地上写真が撮影された場所を示すスクリーンショット
航空写真が撮影された場所を示すスクリーンショット
Pix4D rayCloudの航空および地上写真画像
Pix4DのrayCloudで見る空撮画像と地上撮影画像

空撮にはDJI Phantom 4 Professionalを使用し、1つのダブルグリッドのフライトを実施しました。どちらの撮影でも、できる限り多くの情報を記録するためにRAW形式で撮影しました。
写真測量法を用いて制作された3Dモデルの詳細
航空写真と地上写真を組み合わせることで、より詳細なモデル生成が可能となった


「構造物の角の部分を多めに撮影したことも効果的でした。写真の撮り方さえ知っていれば、誰でも写真測量技術者になれますよ。」(Laihola氏)

1,320枚もの大量の画像を撮影したことで、詳細なモデルの作成に必要なオーバーラップも十分に確保できました。次のステップは、画像の結合です。

空撮画像と地上撮影画像を結合

地上で撮影した画像とドローン画像では色の「暖かさ」が大きく異なり、ホワイトバランスにも差があったため、ほぼ確実にモデルの色合いにムラができてしまう状態でした。そこで、Laihola氏はAdobe Lightroomを使用してRAW画像を編集し、色調を均一化しました。写真の補正が1枚終わると、後はAdobe Lightroomで同じ変更を全体に一括適用できたため、この作業に要した時間はわずか1時間半でした。

補正後の画像をJPGファイルとしてエクスポートし、Pix4Dmapperにインポートしました。2台のデスクトップコンピューターでPix4Dmapperを実行し、空撮画像と地上撮影画像を並列処理して、その後マージしました。両方のデータセットを一度に確認できたので、共通のタイポイントの特定は容易でした。

点群は、マージ後のプロジェクトを利用して生成しています。

画像数を減らすか処理オプションを絞れば、点群の生成にかかる時間を短縮できた可能性はありますが、多くの画像を使用したおかげで見栄えのよいモデルが完成しました。「Pix4Dmapperで密度の高い点群を扱う場合、画像が多いほど、できることが広がります。点が含まれる画像の枚数は変更できますが、枚数を増やせば増やすほど点群のノイズが小さくなります。つまり、写真の枚数を増やせば、手作業で点群をクリーンアップする手間が減るのです。」今回のプロジェクトでは、5つという最小限のマッチ数で済みました。

点群の生成が完了した後、手作業での編集を開始しました。Laihola氏によれば、モデルのクリーンアップにかかった時間はおよそ6時間でしたが、その大部分を梁の間の狭い空間に費やしたとのことです。「アノテーションツール内のカービングツールのおかげで、作業はとても簡単でした。もう一度このモデルを制作するとしたら、もっと多くの写真を撮るでしょうね。私からのアドバイスは、とにかくたくさん写真を撮って、処理を機械に任せることです。」(Laihola氏)


プロジェクトのフライスル―動画を見る

モデルと結果

こうして完成した3D点群をもとに、Pölkky Oy社のチームと請負業者が機械の撤去計画を策定しました。「相手に画像だけ送っても、全体像は伝えられません。

大勢で会議をするとき、何かについて議論していても、全員が同じ認識で話し合っているかどうかは、判断がつきにづらいものです。しかし、3Dモデルを指し示しながら、『問題はここで、ここに桁があるので、こちらからケーブルを通すべきです』などと話せば、問題を視覚的に説明でき、合意の形成がぐっとスムーズになります。」(Laihola氏)

撤去作業の開始前に、Pölkky Oy社の機械担当チームとエンジニアリングチーム、そして請負業者がモデル(平均GSD 0.5 cm)による測定を行いました。現地でも巻尺を使った測定が行われましたが、いずれの結果も、モデルを使った測定値とのずれは1 cm以内でした。

Laihola氏の3Dモデルを活用した事前計画のおかげで、既存設備の撤去から新しい機械設備の設置までスムーズに進み、工場の操業中断を最小限に抑えられました。

設置した重機のドローン画像
設置済み機械のドローン画像
「このプロジェクトに関しては、Pix4D以外のソフトウェアは考えられませんでした。写真の撮り方さえ知っていれば、簡単に利用できますね。」(Laihola氏)

趣味のドローンパイロットから、プロの写真測量技術者に

Laihola氏の「本職」はPölkky Oy社の不動産部門のマネージャーですが、週末にはよくドローンを飛ばしています。「以前から、ドローンが欲しいと思っていたんですよ。」Laihola氏は笑顔で語りました。

趣味でモデルを作成するだけでなく、地元の民間地域計画プランナーにも協力しています。

「私が協力しているプランナーは、過去にオルソモザイクを少し扱った経験がありましたが、こうした方面の知識はありませんでした。しかし、そのプランナーはあるプロジェクトに興味を持って、ドローンを飛ばす私のためにグラウンドコントロールポイントを設置してくれました。完成したプロジェクトを見て、この技術の可能性をはっきりと感じ取ったらしく、それ以来私を頼りにしてくれています。」(Laihola氏)

Laihola氏は短期間で高度な写真測量のスキルを身につけ、Pix4Dmapper Fundamentals試験に合格しました。会社もLaihola氏と請負契約を結び、そのマッピングのスキルと機材を活用しています。

「私自身は写真家を名乗りたいのですが、今ではすっかり写真測量技術者になってしまいました。」(Laihola氏)


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