聖エリザベート教会の鐘楼:屋外と屋内の3D測量
文化財に指定されている建築物の改修には、地方自治体や建築家から下請業者まで、さまざまな関係者が関与します。
関係者によって、求められる文書化、測定、対話のレベルは異なります。建築物の外部と内部をミリ単位の精度で再現した、リアルな3Dモデルを作成することで、あらゆるレベルのコミュニケーションが可能になるほか、3Dモデルを保全、建設、設計のさまざまな用途に活用することができます。
この建築物の空間的特性、不均一なテクスチャのコンクリート壁、窓の少なさ、そして画像収集と編集を手がけたvairecoの豊富なノウハウが、フォトグラメトリ―(SfM)による建築物の再構築(特に屋内 のマッピング)を成功に導く要因となりました。
フォトグラメトリー(SfM)とドローンを活用した建築物の大規模改修と保全
1960年代半ばにドイツのフライブルクに建設された聖エリザベート教会は、教会建築の名手であったドイツ人建築家Rainer Disseの最も象徴的な作品の1つです。バウハウスの建築家Egon Eiermannに師事し、その影響を受けたDisseは、表現力豊かなブルータリズム様式で知られています。聖エリザベート教会には、打ち放しのコンクリートを使用した大胆な設計が施されています。
本館と独立した鐘楼からなるこの教会は、正式な文化財に指定されています。本館は2010年代初頭に改修され、集合住宅に転用されました。しかし、鐘楼は改修が難しい構造であることが判明し、今後の方針が決まらないままになっていました。最終的に、建築家で建設業を営むIngrid Maria Buron de Preser氏がプロジェクトに参加し、改修の許可を得ることになりました。
鐘楼の改修
Ingrid Maria Buron de Preser氏はこのコンクリートの建築物を、生活と仕事を表す現代的な都市オブジェと位置付け、創作活動のための拠点とすることを構想しました。
同氏は次のように説明しています。「私の構想は、まったく新しい形で私的空間と公的空間を組み合わせることです。コンセプトは、都会的な雰囲気があるリラックスしたカルチエ - アートハウス - コンセプトストアです。」
建物は5階建てで、芸術や文化のワークショップのためのクリエイティブスタジオ、2つの住戸、釣鐘室が含まれます。釣鐘室はペントハウスに生まれ変わる予定です。
改修前の状態を示す文書の作成
改修前の状態を示す文書を作成するにあたり、Buron de Preser氏はvaireco GmbHのオペレーティングマネージャーであるKen Varner博士に調査を依頼しました。vairecoは、ミリ単位の精度で建築物の3D測量を行う精密な写真測量技術サービスを提供しています。同社の主力事業は古い建築物(教会、城、石壁など)の改修であり、扱う建築物のほとんどがドイツで保護対象となっている文化財です。vairecoが提供する3Dモデルは、文化保護局が義務付けている損傷に関する報告書の大幅な簡素化に貢献しています。
聖エリザベート教会では、vairecoの担当チームが3D写真測量を実施し、屋外と屋内のデータを統合しました。
結果として1つの完結した参照用ファイルが得られ、ワンクリックで共有できるようになりました。このファイルにより、プロジェクトに関わる複数のチームの作業やコミュニケーションが容易になりました。「素晴らしいです。細部の状態まで隅々まで確認できますし、どの部分を見ているのかも正確にわかりますね。」Varner氏が見せた3Dモデルに、Buron de Preser氏は驚きを隠せませんでした。建築家、下請業者、都市計画担当者、地域の文化保護局は、この視覚的で測定可能な対話型の3Dモデルを使用して、画像で損傷の状態を評価し、寸法を測ることができました。
写真測量(SfM)ソフトウェアを使用した3D建物測量
この測量の主な目的は、建築計画および改修計画の立案に必要となる、コンクリートの外壁と内壁の高解像度画像(ミリ単位のGSDを達成)と、ミリ単位の測定値を提供することでした。
このプロジェクトは、画像の収集から成果物の作成までに4日間を要しました。1日目に画像の収集、2日目にサブプロジェクトでの画像処理を行い、3日目にプロジェクトの結合、キャリブレーション、点群の生成を行いました。最終日は、点群の編集、メッシュの生成と公開に充てられました。
会社 | vaireco GmbH |
プロジェクトマネージャー | Dr. Ken Varner |
顧客 | Architecture Artist and Builder Ingrid Maria Buron de Preser |
ロケーション | ドイツ、フライブルグ 48°01'03.4"N 7°51'14.4"E |
ソフトウェア | Pix4Dmapper |
撮影デバイスと画像枚数 | 1,100 枚、Sony Alpha 5000 (手持ち), 600 枚、 DJI Mavic (空撮) |
相対精度 | ± 3mm (計測精度) |
平均地上解像度 (GSD) | 1.5mm |
チーム を組んで画像を撮影
画像の収集と現場でのキャリブレーションは6時間で終わりました。データの取得は、主にvairecoのチームがSony alpha 5000による手持ち撮影で行いました。鐘楼の外壁の上半分は、SchwarzwalddrohneのSebastian Mattes氏がDJI Mavicを使用して撮影しました。
画像収集の段階で大きな課題になったのは、建物全体を内外の隅々まで撮影することと、室内の画像と屋外の画像を正確にリンクさせることでした。この2つの課題は、画像収集を開始する前に空間のつなぎ方を慎重に計画することで解決されました。この手法は、イギリスの高層タワーのモデル化で使用された手法に似ています。
画像を基に、リアルで測定可能なデータを生成
3Dモデルを作成するために、写真測量ソフトウェアであ るPix4Dmapper Pix4Dmapperを使用して画像を処理しました。まず、画像をブロックに分割し、個々のプロジェクトとして別々にキャリブレーションを行いました。続いて、これらのサブプロジェクトを1つのプロジェクトに統合し、最適化しました。さらに、プロジェクトを処理して点群を生成し、点群の編集、メッシュの生成、 そして公開を行いました。
「Pix4Dmapperは 、高品質の画像処理機能と高レベルの測定精度を備えていますが、その決定的な利点は、モデルの中に手動操作で入り込むことができ、困難な写真測量プロジェクトに簡単に取り組める柔軟性にあります。」 vaireco GmbHのオペレーティングマネージャー、Ken Varner博士
最終的な3Dモデル
最終的にvairecoは平均GSD 1.5mm、相対測定精度±3mmを達成しました。その後、このモデルは保護に関する文書の作成、具体的な分析、計画立案、改修のための基準文書として使用されています。
建築物の外部と内部を1つのモデルとして正確にモデリングすることで、文書を簡素化し、コラボレーションやコミュニケーションを効率化できるだけでなく、壁や床の厚さも正確に表現することができます。この建築物の外壁、内壁、床はすべてコンクリート製ですが、その厚さを正確に確認できるようになりました。