さまざまな建設プロジェクトに用いられるドローンマッピング
オーストリアの大手建設会社であるSTRABAGは、過去4年間ドローンを使用しており、ドローンマッピングによって時間を大幅に節約し、リスクを軽減できることを学んだ。従来の測量方法では叶えられなかった結果をもたらすこともある。
4年以上Pix4Dとその他のオプションを試した結果、STRASBAGは次のように述べている:「Pix4Dはマッピングおよび処理が非常に簡単」
STRABAGは何年もの間Pix4Dを使用しており、写真測量技術を使った多くのプロジェクトのマッピングを手がけている。この記事では3つのポイントに焦点を当てる:
STRABAGについて
オーストリアに本社を置くSTRABAGは、72,000人を超える従業員を擁し、世界中でサービスを提供している。ドローン部門はドイツのレーゲンスブルクにあり、道路や橋などのインフラストラクチャーのマッピング、ストックパイルの測定、建設現場の監視に重点を置いている。
ドローン部門は、6人構成で世界中の複雑で大規模なマッピングプロジェクトを管理するチームである。この規模は、STRABAGの事業部門をトレーニングし、プロジェクトを独自のドローンでマッピングすることによって達成された。事業部門は毎月40以上のプロジェクト手がけており、その数は増え続けている。
ドローンとPix4D写真測量・SfMソフトウェアを用いたマッピング
ソフトウェアソリューションを選択する際に考慮される要素として挙げられるのが、結果および既存のワークフローとの互換性の2つである。STRABAGのチームにとって重要なのは、どのソフトウェアも使いやすく、信頼性の高い結果を生み出し、CADやBIMなどの他のソフトウェアと互換性があること。ソフトウェアは使いやすいだけでなく、既存の建設ワークフローとシームレスに統合し、増え続けるプロジェクトに対応する必要がある。
他のソフトウェアソリューションを比較した後、STRABAGはPix4Dを選択。「当社には、スムーズなワークフローが重要であり、Pix4Dは最も使いやすいソフトウェアの1つだった」と、STRABAG UAV部長のThomas Gröningerはコメントした。
Pix4Dengine:エンタープライズ向けのシームレスな統合
複雑で大規模なプロジェクトの場合、処理時間を短縮し、ワークフローを合理化する必要があるため、Pix4DのエンタープライズソリューションがSTRABAGにとって最善の選択となった。Pix4Dの処理エンジンは、STRABAGのニーズを満たすようにカスタマイズされており、安全なクラウドコンピューティングサーバーでホストされている。チームは高い柔軟性を得ることができ、処理時間の削減ができた。
アクセス困難なインフラの近代化に写真測量・SfM測量を活用
コロンビアでの橋の改装を伴う道路工事
コロンビアの北西に位置するアンティオキア州は、山が多い密林地帯である。STRABAGは、この困難な土地を横断する176キロメートルにわたる道路建設を計画、実装、ファイナンス、そして運用する契約を引き受けた。道路はAutopista al Mar 1と呼ばれ、メデリンとボロンボロをつなぐ。
プロジェクト情報
プロジェクとタイプ | 高速道路の建設と改修 |
場所 | コロンビア |
プロジェクトサイズ | 176 km |
画像枚数 | 20以上の橋をマッピング、各箇所~2,000枚 |
解像度 | GSD ~1.2 cm/pixel |
ワークフロー | DJI Inspire 1 ドローンとX3 カメラをPix4Dcaptureでオペレーション + GCPs |
ソフトウェア | Pix4Dengine Pix4Dcapture |
Autopista al Mar 1のプロジェクトは、75キロの新しい道路建設と、65キロの既存道路の近代化、トンネル、および20を超える橋の再建を含む。橋はプロジェクトの成功の鍵だが、技術的な詳細はまとまっていなかった。すべて(基礎、柱、周囲の地形を含む)をマッピングするために、STRABAGはドローンとPix4Dソフトウェアに注目した。
「ドローンを用いたことによって、橋の周りを飛行させて、側面、下部、地形までといった基盤の全体像を掴むことができた。最終的に、従来の測量方法では得られなかった多くのデータを手に入れることができ、しかもすべてが迅速だった」とThomasは語る。
橋の調査は複雑で、コストも時間もかかる
従来の測量方法では、橋梁点検は複雑で、費用も時間もかかるプロセスだった。車の通りがある場所や不安定な場所では危険も伴う。Thomasは次のように説明する。「GPS測量は車が行き交う場所を歩き回らなければいけない。非常に危険で、時に不可能でもある。ドローンを使えば、交通量がある時でも橋の上からデータを取得することができる。従来の測量方法ではなく、ドローンとフォトグラメトリック・SfMマッピングを使った方が良い」。
さらに、従来の測量方法ではマッピングが困難なエリアが橋には存在する。Thomasは続ける:「従来の方法では、橋のすべてのポイントを測量しなければならない。もし橋が幅100メートルで長さが200メートルだったとしたら、すべてのエッジを必ず1メートルおきに測量する。トータルステ ーションを用いた測量では、さらなるポイントの測量が必要であった。この工程は時間がかかる上、橋下のポイントやビーム、橋柱まで測量できないため不十分である。つまり、人が歩行できる橋の表面しか測量できないことになる。この様な従来の測量方法に伴う制限に加え、コロンビアのプロジェクトの急傾斜地は、通常の測量士にとってアクセス不可能だった。そのため、別の技術を使う必要があった」。
傾斜のある地形における橋のマッピング
山岳地帯に位置していることからプロジェクトは複雑になった。チームが直面した問題:
- 橋の基礎と柱はPix4Dcapture app自由飛行モードでマッピングする必要があった。
- 基盤と柱の両方が対象地域にあったため、[グラウンドコントロールポイント(GCP)](https://support.pix4d.com/hc/en-us/articles/202558699-Using-GCPs "Ground Control Points")は道路の水平方向と橋の柱の垂直方向の両方に設置する必要があった。GNSS接続ネットワークがなかったため、GCPはトータルステーションを使用して測定する必要があった。
- このエリアには非常に密集した植生があり、3D点群に不必要なノイズや人工物などを表示させる可能性があった。このような場合でも、Pix4DのrayCloudソリューションを使用すれば、点群を簡単に編集して正確なモデル作成することができる。
Pix4Dドローンマッピングソフトウェアによるプロセスの合理化
収集されたすべての画像は、Pix4Dマッピングソフトウェアで処理され、既存の橋の正確で非常に詳細な3Dモデルと周辺地域のジオリファレンスされたオルソ画像を生成する。(解像度または地上解像度(GSD))は1.2cm/pixel)。3Dモデルは、橋の周りのエリアを詳細に視覚化するのに役立ち、チームは正確な計測と体積計算により建設プロジェクトを効率的に計画することが出来た。3D点群をベクトル化し、橋のラインを取得。生成されたDTMを用い、ボリュームを計算した。
STRABAGは、Pix4Dソフトウェアを
プロセスの効率化に役立て、それぞれの橋のマッピングにかかる時間を削減した。「Pix4Dは、他の写真測量ソフトウェアに比べ、より素早 く機能することを証明した。手作業による処理時間を大幅に短縮する、自動GCPマーキングなどの機能が組み込まれている。他のソフトウェアは以前のプロジェクトでテストしたが、速度が遅いか、橋などの複雑な構造のアライメントに問題があることが判明した」とThomasは振り返る。このプロジェクトにドローンを使用することによって、
時間とコストが節約されるだけでなく、測定が不可能だったエリアの測定も可能になった。すでに解析結果にあった通り、これほど複雑で危険を伴う産業はほとんどない。土工を80%も早くモニタリング
ドイツにおける土工管理
完成すると、ドイツのダルムシュタットにある Facility for Antiproton and Ion Research(FAIR)は、世界最大かつ最も複雑な粒子加速器の1つになる。センターピースは、円周1,100メートルのリング加速器。「FAIR Ring」の建設はプロジェクトの一環に過ぎない。この4ヵ年プロジェクトには10ヵ国が関与するため、簡単で効率的な土工モニタリングが不可欠だ。
プロジェクト情報
プロジェクトタイプ | 大規模施設の建設 |
場所 | ダルムシュタット・ドイツ |
プロジェクト規模 | 30km² |
画像枚 数 | 1ヶ月につき1,800枚 |
解析度 | GSD ~1.3㎝/pixel |
ワークフロー | Sony RX1 R2 42 MPカメラを搭載したMicrodrones MD4-1000ドローン + プレート上に設置したGCP |
ソフトウェア | Pix4Dengine |
最新のデータを取得し、時間の経過に伴う体積の変化を計算するために、STRABAGは毎月末にドローン飛行を行う。収集した画像をPix4Dソフトウェアで処理し、生成した数値地形モデル(DTM)を使い体積を計算して変化を推定する。これらはプロジェクトマネージャーや請負業者などの関係者と簡単に共有可能。また、プロジェクトの記録として機能するだけでなく、作業が予定どおりに進行していることを確認できる。
ドローンとPix4Dは大幅に作業時短に貢献し、従来の方法に比べ80%までも早く結果を得られる。スタンダードな技術を使った測量は1回で約2週間かかるが、ドローンを活用することでSTRABAGは1 日でエリアを飛行し、もう1日で処理することが出来る。「2週間に比べ、飛行と処理に2日間しか必要がない — それが我々がドローン技術を使っている理由です。時短になるし、精度は良い」、とThomasは説明する。
大規模なプロジェクトを効率的に記録
ケニヤでのダム建設
ケニアのThibaダムは地域に大きな影響を与える。一年中安定した給水があれば、毎年2回目の収穫が可能になる。
建設を開始する前に、STRABAGはダム周辺の8平方キロメートルの地図を作成する必要があった。ドローンの使用は、空撮画像から全体像を取得し、地形の3Dモデルを作成するための最も効率的で費用対効果の高い方法だった。
プロジェクト詳細
プロジェクトタイプ | ダム建設 |
場所 | ケニア・ナイロビ |
プロジェクトの規模 | 8km² |
画像数 | 6,500 |
解析度 | GSD ~2.4 cm/pixel |
ワークフロー | X4Sカメラを搭載したInspire IIドローン + コンクリート上に設置されたGCP |
ソフトウェア | Pix4Dengine |
この大規模プロジェクトを正確にマッピングし、ジオリファレンスされたデータを取得するために、STRABAGはいくつかのGCPを配置した。しかし、課題に直面した。GCPにスプレーマークを使用するのは毎朝の大雨によりマークが消されるため難しく、ある1日で収集したデータを次の日のデータへ比較することが困難になった。
チームはコンクリートのGCPを使用することで解決策を見出し、最 終的に測定値の取得に成功。その精度に自信を持つことができた。GCPの作成と測定のプロセスには3週間がかかったが、GCPが設置後、ドローン飛行によるエリア全体の画像を収集はたった3日で完了した。膨大な画像の量をPix4Dで処理するのには1週間かかった。
GCPのマーキングプロセスは非常に困難であることが判明したため、STRABAGはより時間効率の高いソリューションを模索。最近、ドローンを使用してPPK-Direct ジオリファレンシングシステムを試行した。「GPSシステムはPix4Dとの互換性が良い。テストからも良い結果が得られた。Pix4Dでキャリブレーションを計算する必要はなくなった。2cm以下の精密なGPS情報が画像ファイルに埋め込まれている。GCPの数を減らすことができ、将来的に膨大な時間削減に繋がる。例えば、このプロジェクトでは100個のGCPを使用することはなく、たった20で済んだ」とThomasは語る。
一つのツールで複数のプロジェクト
ここで紹介したプロジェクトは、一見スケール、複雑さ、ロケーションなどが多様なプロジェクトだ。しかし、全てのプロジェクトにおいて効率の良いデータ収集と処理にSTRABAGが活用するのは、ドローンとPix4Dのドローンマッピングソフトウェアであった。